iPS細胞とは、増殖して他の各種細胞になることが可能な細胞です。
私たちの身体には、皮膚の細胞、神経の細胞、筋肉の細胞など、それぞれ役割を持った細胞が数多く存在しています。
このような特徴的な役割を持った細胞は、これまで別の細胞に変化することはないと考えられていました。
しかし、この常識を打ち破ったのが、京都大学iPS細胞研究所の山中教授らの研究グループです。
山中教授らは、すでに特徴的な役割を持った細胞に数種類の遺伝子を取り込ませることで、あらゆる細胞に変化することのできる細胞を作製することに成功しました。これが、ニュースでも取り上げられているiPS細胞です。
(図-2)
このiPS細胞は、機能が失われた身体の一部を補う再生医療や、新薬開発などの研究に応用できると期待されています。
iPS細胞を培養するためには、熟練の培養技術が必要とされており、より効率的な手法が求められていました。そこで、注目されたのがラミニンです。
ラミニンは細胞外マトリックスの一種で、IV型コラーゲンとともに体の基底膜という重要な部分に存在して細胞を育んでいます。
平成24年に大阪大学と京都大学の共同研究チームは、iPS細胞の培養にラミニンフラグメントを用いると、これまでよりも効率的にiPS細胞を培養できることを発表しました。かねてから大阪大学と種々の共同研究を行って来た株式会社ニッピは大阪大学、京都大学よりこのラミニンフラグメントの製造と販売に関する権利を得ました。その後ニッピバイオマトリックス研究所において、このラミニンフラグメントを大量生産する技術を開発。また医療応用可能な安全性の高いラミニンフラグメントの製造の開発も行っています。
ニッピは、2013年7月よりラミニンフラグメントを『iMatrix-511』の商品名で一般に販売開始しました。
この成果により、ニッピは、再生医療の分野での進展が期待されています。
この培養用基質は、コラーゲンと同じく、肌の中では細胞の増殖に欠かせない“細胞外マトリックス”にある成分の一部です。ニッピはこの“細胞外マトリックス”専門の研究機関を持っています。
マトリックスとは、もともとラテン語由来の言葉で、“mater”つまり“母”と同じ言語です。日本語では基質と訳されますが、その意味には日本語では表現しきれない、“命を生み出し育むもの”といった生き生きしたイメージが重なります。